TOP2005年記録

長い岩稜と雪壁、おまけに沢もある

北アルプス/北鎌尾根〜奥穂高岳〜西穂高岳
(雪稜)

小暮

【日時】2005年5月3日(火)〜8日(日)
【メンバー】L小暮、笹川


5/3 アプローチが核心? (高瀬ダム〜湯俣〜千天出合〜取付)
 高瀬ダムまでタクシーで入山。単独行の人と相乗りして、費用が助かる。聞けばなんとまったく同じルートだった。ダムから湯俣までは、重荷にあえぎゆっくりと歩く。湯俣から先の水俣沢は非常に水量が多く、とても沢沿いに歩くことなど出来ない。しっかりとした道が左岸に続いており、これを辿る。途中、崖でルートが崩壊しており、沢に降りる。タクシーで一緒だった単独の方が岩の上で休んで、渡渉するか逡巡しているようだ。我々もどうするか様子を探るが、あまりの水量にとても渡渉する気がおきない。とりあえず沢靴に履き替えてルート検討する。悩んだ挙句、仕方なくへつり気味に流れの端を前進することに。とりあえず空荷でロープをつけて、岩で体を支えながら流れに逆らって進み、深みは一枚岩を微妙なへつりで抜けて、ロープをFIXする。単独者は、荷物を背負って、なんと靴下で越えていった。へつりの部分はさぞ恐ろしかっただろうに。元の場所に戻ると、後から3人パーティがやってきていた。彼らに、へつりは悪いと教えると、ロープを出して渡渉をはじめた。我々は、FIXを伝って荷物を持って激流を越え、最後はロープ伝いに荷物を渡して越えた。後ろを見ると、3人パーティの最後の人が流されそうになっていて、引きずりあげられていた。
 この通過に1時間以上かかってしまった。大変だが、渡渉した方が早かっただろう。その先、大きな倒木が丸太橋のようになっていて、恐々と右岸に移る。その後は、腰まで水量のあるスクラム渡渉を繰り返す。へつり、雪面登りなど、せわしなく続く。沢靴は、雪面は滑るのだが、単独行の方のようなパンツ一丁姿で靴下での渡渉や、3人パーティのようにプラブーツでそのままの渡渉よりはましだろうか。
 千天出合を過ぎると、右岸の踏み跡を辿る。最後は、ケルンの目印のところで渡渉し、ようやく多門次新道取付だ。服が乾きかけていたというのに、最後の渡渉で、すっかり腰までびしょ濡れになってしまった。計画ではP2まで行くつもりだったが、既に15時をまわっており、濡れた服を乾かしたいので、ここで泊まることに決める。焚き火を起こし、服を乾かすことが出来た。

5/4 重荷のキタカマ  (取付〜北鎌尾根〜独標)
 沢での朝を迎える。昨日からずっと沢登りをしている気分だ。取付からP2ノ肩までは急な潅木帯で、木の根をつかんでは体を引き上げるという木登り的登攀となる。雪は無い。厳冬期に来たら木の根がつかめないので大変だろうなと思う。P2ノ肩から尾根に上がり、易しいガレと一部の雪壁の登りだ。
 硫黄尾根が真近に迫ってよく見える。雪の部分は、先行者のトレースが続いており、問題ない。
 P5は、雪壁のトラバースで天上沢側をダブルアックスで進む。続くP6は、反対の千丈沢側の岩のバンドを進む。P7から急な崖を、長いテープスリングを懸垂のように折り返してつかんで、北鎌ノコルまで降りる。大天井岳経由で貧乏沢を降りるアプローチの場合は、北鎌沢を上ってコルから北鎌尾根に取り付くようだ。こちらは、水俣沢の渡渉がないのでずいぶん楽だが、自分としては末端から取り付く方が好みである。
 北鎌ノコルから先も2級程度の岩場が続く。ロープが必要なほどではないが、落ちれば助からないので気が抜けない。軽量化に失敗して荷物が重い。
 ザイルは8mmでよかったし、スコップも1本は簡易スコップでよかった。雪崩の危険はあまりなく、むしろ転落の危険の方が大きいので、荷を軽くした方が安全だった。いずれにしても重荷で歩くスピードはあがらなかった。小ピークを越え、P9を越えると、いよいよ独標。最後は、岩溝の間の急雪壁をダブルアックスで登る。独標ピークから先、北鎌平までテン場もなさそうなので、ピークのテン場跡を整地して幕とする。

5/5 長かった北鎌を越えて  (独標〜槍ヶ岳〜大キレット〜A沢ノコル)
 今日も快晴かと思いきや、空一面の雲。次第に雲は減っていったが、明日以降の下り坂の天気予報を考えると、西穂高岳まで行けるか心配になる。なるべく今日の晴天のうちに距離を稼ぎたい。槍ヶ岳までの稜線は、小さなアップダウンが多い。ほとんど夏道と化したガレ場にアイゼンを軋ませながら歩く。
 槍ヶ岳直下は、凹角の雪壁を慎重 独標より槍の穂先に登る。結局、北鎌尾根ではロープを使うことなくピークに出た。長かった。背後を振り返り、満足感に浸る。ピークには、登山者が入れ替わり立ち替わり登ってくる。まだ、先は長い。大展望を後に、槍ヶ岳山荘まで降りて、大休止とする。ここから南岳までは、踏み跡も明瞭な気楽な登山道である。南岳から先が、大キレットである。大キレットの正面には北穂高岳の岩壁が大きく迫り、圧倒された。
 南岳の下りは、少々緊張した。ほぼ夏道の鎖場をアイゼンで下っていくのは、高度感もあり慎重になる。結構時間も掛かり、最低鞍部に着く頃には、15時をまわってしまった。行動時間も10時間近くなり、疲れのためか体が急激に重く感じられてきた。長谷川ピークの馬乗りの岩場は、疲労のため危なっかしく渡る。北穂高小屋まで行きたかったが、フラフラの体での岩場歩きは危険なので、A沢ノコルで幕営する。雪を切り崩すと風を防げるなかなかの幕場となった。

5/6 雨ニモマケズ  (A沢ノコル〜北穂高岳〜涸沢岳〜奥穂高岳)
 朝から高曇りの天気。出発するとちらちらと小雪が舞っている。すぐに現れる飛騨泣きの岩場は、高度感もありナカナカ恐ろしい。鎖こそ設置されているが、恐怖感は北鎌よりも上だろうか。更に雪壁を100m位登って北穂山荘に着いた。雪は既に小雨に変わっている。天候が心配だが、行動不能なほどではないので、そのまま進む。涸沢岳までも大キレット同様に2級程度の岩場が続くが、鎖が多く設置されていて整備されている感じがした。穂高岳山荘に、12:05着。入口ロビーには、ストーブもあり、ありがたく大休止させてもらう。貼り出されている天気予報では、今日はくもりのち雨、明日は雨のちくもりの予報である。今日は行けるところまで進んで、明日は午後から行動すれば何とか予定完遂できると目処をたてる。
 ゆっくりしてから奥穂高岳に向けて出発する。ロープで確保しながら下降している3人パーティとすれ違い、鎖場と梯子を過ぎ、登山道を辿ってピークに着く頃には雨も激しくなってきた。すっかりびしょ濡れで、山頂は風も強く散々である。時間は早いが、行動の続行は無理と幕場を探し始める。西穂高岳方面に少し下ったところにやや広い所があったので、ブロックを積んでテントを張った

5/7 絶景を眺める秀逸ルート (奥穂高岳〜ジャンダルム〜間ノ岳〜西穂高岳手前)
 今日はひさびさにゆっくり眠る。7時過ぎに起きて、しばらく様子見で待機する。毎日遅くまで歩いて、早く出発していたので、久しぶりにゆっくりすることが出来きたのはよかった。降り続く雨のため、トイレに行くのも億劫だった。
 10時を過ぎると雨もやんできたので、準備して10時50分に出発。まだガスの中で視界が悪い。足元の雪も雨でぐずぐずの状態で歩きにくい。
 馬ノ背のスノーリッジを抜けて、ロバノ耳はぐずぐずのいやらしい雪壁をトラバースする。周囲のガスは急速に晴れてきてドラマチックである。格好の良いジャンダルムは岳沢側を巻く。腐れ雪で片足がずぼっと腰まで嵌ってしまう。
 ジャンダルムは西穂高側から登山道があり、ピークまで行けるようだったが、今回はパスして先に進む。見渡す周囲は見事な雲海となり、岩と雪と雲海が絶景である。
 天狗岳、間ノ岳とピークが連続する。鎖と浮石の多いガレが続く。岩場自体は大キレットより易しく感 じるが、浮石が多いのと小屋の間隔が広いことでエアリアマップでは点線扱いなのだろう。
 出発が遅かったので、夕闇が迫りつつあったが、明日は下山だけとしたかったので、少々遅くなっても行動を続ける。赤石岳直下は、雨で崩れた雪が最悪の状態で苦労した。トレースは既に無く、ぐずぐずの雪で不安定だったのでザイルを使うべきだったかもしれない。結局、赤石岳の先、西穂高手前のピークまで進んだ。沈んでいく夕陽が綺麗だった。

5/8 ルート完遂 (西穂高岳〜西穂山荘〜上高地)
 御来光をテントから顔を出して仰ぎ見た。いよいよ最終日である。西穂高岳のピークは、幕場から5分ほどで到着した。既に登ってきた人が居て、ビデオを回していた。朝のすがすがしい空気を吸い込み、パノラマを楽しんだ。
 西穂山荘までの下りはすっかり夏山状態だった。山荘からは、アンバランスな位、立派な道標のある樹林帯の雪道を下って上高地に下山した。終わってみれば長かった北鎌尾根と、延々と続く岩場の縦走もあり、なかなか充実した山行だった。雪稜というには時期が遅く、縦走の色濃い山行だった。あと2〜3週時期が早ければ、更に手ごたえがあっただろう。

【行程】
5/3 高瀬ダム(6:50)〜名無小屋(8:10)
   〜湯俣(9:25/40)〜千天出合(14:50)
   〜取付C1(15:30)
5/4 C1(5:00)〜P2(7:15/30)〜P4(9:40)
   〜北鎌ノコル(13:40)〜独標C2(16:30)
5/5 C2(5:15)〜北鎌平(7:40/8:10)
   〜槍ヶ岳(9:40/10:00)
   〜槍ヶ岳山荘(10:20/40)
   〜南岳小屋(13:25)
   〜A沢ノコルC3(16:10)
5/6 C3(5:50)〜北穂山荘(8:25)
   〜最低コル(10:15/30)〜涸沢岳(11:50)
   〜穂高山荘(12:05/45)
   〜奥穂高岳(13:50)
   〜山頂直下C4(14:00)
5/7 C4(10:50)〜ジャンダルム先(12:20)
   〜天狗ノコル(14:20)〜天狗岩(14:50)
   〜間ノ岳(14:50)
   〜西穂高岳手前ピークC5(17:55)
5/8 C5(6:10)〜西穂高岳(6:15/45)
   〜独標(8:00)〜西穂山荘(8:50)
   〜上高地(10:40)
【地図】烏帽子岳、槍ヶ岳、穂高岳
   、笠ケ岳、上高地