体験的 ヤブの歩き方


古野 寛


古い本にはヤブの歩き方や焚き火の仕方などが登山技術として紹介されていましたが最近は見かけなくなりました。日頃心がけていることを書いてみました。ご意見お待ちします。

1.心構えと準備

・ヤブとは喧嘩しないことが原則。まず弱点を捜す。出来ればいなす。もちろん灌木など強行突破が良い場合もある。力任せでなく相手の流れをよく見る。

ただし常に闘争心を失わないこと、特に長く続く場合は気持ちが萎えてしまうことがある。

・後に続く人は先頭の人にくっつくぐらいに近づいて歩くと楽。離れてしまうと一度開かれたヤブが閉じてしまう。

・ザックに余計なものをつけない。ウエストポーチや雨蓋のファスナーの紐は冬には必需品だが小枝に引っかかって開きやすいので内側に入れる。ピッケルの石突きも雨蓋の中に入れる。靴ひもももしスパッツを付けるなら中に入れておこう。当然長い髪の人は束ねて引っかからないようにしておこう。

・当然手袋は必需品である。また暑いときでも長袖を着ないとかすり傷の花盛りとなる。めがねをかけてない人は目を付くことがあるのでサングラスかゴーグルがあればベストである。

・先頭は交代するのが基本であるが後ろの人は地形が読みやすいのでチェックしながら進む。

2.ルートの取り方

・基本は稜線を行く。地図に道が無くても踏み跡があることが多い。笹の場合は雪の流れる方向に倒れる。したがって稜線では笹が左右に分かれていて歩きやすい。ちょうど髪の毛を分けた状態を想像するとイメージがわく。

・ただし稜線は灌木も雪によって倒れないので残ることになる。灌木が大きく絡み合う時はけんかせずにいなす。

・同じ理由で稜線には大きな木が列で続いていることが多い。ガスなどで稜線が見つけにくい時のヒントになる。
稜線は山の持ち主の境目や町村境にもなるのでその意味で人為的に大きな木を残している場合もあるが。

・大きな木の下は日当たりが悪いので当然藪が薄くなり歩きやすい。灌木が中途半端だったり、シャクナゲなどの絡みやすい木の場合は灌木と笹藪の境目というのが狙い目である。

・尾根の北西側は藪の成育が悪く歩きやすい。ただし稜線から逃げた場合は早めに戻ったほうがルートミスをしにくい。また登りの場合は登り返しが辛くなる。

・尾根の南東側が切れ落ちているときは、その境目が歩きやすい。理由は、雪庇は南東側に出来、残ることによりその下は藪の生育が良くないためである。

・鞍部に向かう尾根の下りは慎重に。登り返しは倍以上疲れる。山頂付近は尾根が広くもっとも間違えやすい部分である。ここでは全神経を使って大きな地形を確認しよう。

・基本的にトラバースはしない。地図に表れないルンゼなどがあるし、笹などの倒れている所を横切るのは疲れる。また稜線がはっきりしていない場合はトラバースしていると正しい稜線を見つけにくくなる。面倒でもピークを踏んで次のルートを確認すべきである。

3.ルートファインディングテクニック

・常に全体の地形を把握する。地図では10m未満の凸凹は等高線に現れない。細かい地形より回りの全体の地形、遠くの尾根のつながりや沢の切れ込みなど大局を把握すること。

・地図で方向を決めたら前方のなるべく遠くの特徴ある立ち木などを目印に決めてそれを目標にして歩く。近くの灌木を迂回することもあり、ズレが起こりやすいので。

・藪が深いときは立ち木に登って回りを見る。これはかなり有効です。

・背丈以上の藪では潜ってしまうのも手である。

・たまに左右を偵察する。藪が薄い場所がある場合がある。残雪や湿原なども見つけやすい。

・周りの地形が地図と合わない、つまり迷ったと思ったら「もしかしてここにいたら回りの地形と辻褄があうかな」といくつかの候補を選んで検討すると思い込みによる間違いを取り戻すことが出来る。もちろん確実なところまで戻ることは鉄則であるが。

・送電線の鉄塔やマイクロ波の反射板巡視路など地図に書かれてない立派な道があるので注意。逆にエスケープとして利用も出来る。

・コンパスを使うとき、身につけている金属類に注意。笛の金具やナイフ、ビーコン、トランシーバー、携帯電話などによって狂うことがある。

4.その他

・長いルートでは水の確保が重要となる。残雪期は良いがそれ以外では途中での確保も必要。峠や鞍部で沢の源頭が近そうなら15分から30分位下ってみる。地形としては少し急で岩っぽいところの方が早く水にありつける。もし雨が降ればフライやタープで水を集めることもできる。


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